「生活する場所を変える」ということ以外に、日々の暮らしに大きな影響を与えるものがあるとすれば、それは「自分のまわりにいる人」だと思う。
私は今、30代なわけだけれど、思い返してみると20代の時、特に学生の時に築いた人間関係というのは、社会に出てから新たに築いた人間関係とは少し毛色が違う。
学生の方が自由な時間が多かった分、より多くの時間を共に過ごしたし、その分、多くのものを共有できていたのだと思う。
その学生時代の人間関係の中で、強烈に印象に残っている人物が一人いる。
最後に消息を掴んだ時は「宇宙へ行く訓練に参加するからしばらく連絡は誰ともとらない」というようなことを彼の秘書から聞いた。
それもたしか今から6,7年程前だったような気がする。
「価値観が壊れるような経験をしたほうがいい。本物の価値観は、天地がひっくり返るような経験をしても消えないものだから」
「選択に迷ったら、難しいほうを選べ」
「日本では命を大事にしろってよく言うけれど、世界中の誰もが命が一番大事だと思っているわけじゃない。自分の命よりも神が大事だと本当に信じている人もこの世界には存在している。」
彼は、20歳そこそこの、やっと世界に目を向け始めた当時の私に少なくない影響を与えた。
共通の大学の友人にしても、彼が今どこで何をしているのか全くわからないし、生きているのかどうかも不明だ。
長い人生、疎遠になる人というのは必ずいるし、それぞれの暮らしをしていて、お互いの価値観が合致したまま付き合いが続く人というのは本当に一握りだと思っている。
けれども、その変わり者にだけは、また会ってみたいと思う。
あいつ、一体どこで何をしているんだろう?