ワールドカップ開幕の前日、テレビが壊れるというカミサマの悪戯以外の何者でもない悲劇が生じた。こういうジョークみたいなことが本当におこるのがインドという国なんだよなぁ、と、電源の入らないテレビの前で改めて悟った木曜日の夜。現在、家主にテレビを直してくれるよう絶賛交渉中。
さて、インドでの日本チームの試合は現地時間の1:30AM, 3:30AM, 6:30AMと、最も観戦にはきつい時間帯となっている。加えて、日本に比べて圧倒的にワールドカップ熱が低い。やはり国民が熱狂するスポーツと言えばクリケットの国なのである。とはいえ、中にはサッカー好きの人々もいるし、ムンバイにはたくさん欧米人が住んでいるので、週末であれば彼らといっしょにサッカー観戦を楽しむ事はできる。そして今年はなんといってもブラジル人の同僚がオフィスにいるのがスペシャルである。以前、彼女に「ワールドカップシーズンにブラジルに行きたいんだけどどんな感じ?」と聞いたところ、「シーズン中は本当に戦争みたいになるからやめておいたほうがいいわよ」と、爽やかに言われたことがある。彼女自身、普段からサッカーの話をするわけではないが、話を振ってみるとやはりサッカーについて詳しいということが明らかだ。冗談で社内で賭けをしよう、といったら瞬時に真剣になってBet Sheetを作り始めた。すべての試合に予測されるスコアを記入して、スコアもぴったりあてたら何ポイント、勝ったチームを当てたら何ポイント、などなど、なにかと複雑そうなルールを5分でサラッと書いて、それをサッカーファンと思われる同僚たちにメールで送っていた。さらに初戦のブラジルVSクロアチアの3−1というスコアをピッタリとあててしまったのだから、賭けをしようなんて言い出さなければ良かったと、はやくも後悔している。今朝、彼女はBRAZILとデカデカとプリントされたグリーンのTシャツを着てニコニコしながら出社した。おそるべしブラジル人のサッカー熱。
以前、ホーチミンに滞在していたとき、ベトナム人たちのサッカー熱にも驚かされたことがある。滞在していたのは安宿の集まる地域で、朝っぱらから数十人の男たちが集まって賭け事をしていた。私も一回だけ小額の賭けに参加してみたことがあるが、お遊びと言うよりも、文字通りの真剣勝負で中に入って行けそうな雰囲気ではなかったので、その後は彼らといっしょにサッカーを観るだけに留めた記憶がある。普段はベトナム人とたむろしているような外国人も、1、2回参加した後、続いたケースを見た事がない。ベトナム人の中には大金を叩いて借金まみれになって、親の車を売ったりしているような輩もいて、誰々は今スッカラカンなんだよ、みたいな話がよく聞こえて来た。もしかしたら彼らにとっては、理由なんかはどうでもよくて、ただ単に賭け事が好きなだけだったのかもしれないが、ともかくそういう人々を見て来たからこそ、インド人たちにはもうちょっと盛り上がっていただきたい、と思ってしまう。インド政府はサッカーに投資しないので、インドチームはなかなかワールドカップにたどり着くまでの選手が育たないようだ。たしかに、強いチームがたくさんいるサッカーよりもマイナーで、ある程度のスキルがある選手をもともと自国に保持しているクリケットの方が国としては投資する価値があるのかもしれない。
明日はワールドカップが始まってから初めての土曜日。ムンバイは店の運営が深夜1時までなので、ビッグスクリーンで深夜の試合を観戦できるような場所があるのかどうかよくわからないが、とりあえず街へ繰り出してみることにする。