おたふくソースの敗北

8月9日。先月、はじめてお好み焼きを味わったインド人の友達から、「あの味をもう一度!」というリクエストを得て、インド人3名を我が家にお招きしてお好み焼き大会をすることとなった。たった3時間ほどのことだったが、インドの多様性を感じた面白い数時間だったので、書いてみる。

まずお好み焼き大会の当日午前中、今回の企画の提案者からSMS(ショートメッセージ)が届く。「今日はホーリーの日だから、ハムザは卵も肉も大丈夫だけど、僕と妹は食べられない。」という内容。ご存知の方も多かろうが、ヒンドゥー教徒にはベジタリアンが多い。一番厳しいコミュニティでは、肉、卵に加えて、土の下で育つ野菜(たまねぎなど)も食べられない。または、ケーキに入っている卵は大丈夫だが、肉は食べられない、というやや緩めのルールを持ったコミュニティもある。今回やってきた友達は、ヒンドゥー教徒だが、普段は肉(鶏肉)を食べていてベジタリアンではない。しかし、その日はたまたまヒンドゥー暦におけるホーリーの日で、肉を食べられない日であった。一方、ハムザという名の青年はムスリム(イスラム教徒)で、ヒンドゥーの食べない牛肉も食べられるノンベジタリアンである。さて、混乱が生じた。「肉も卵もだめならお好み焼きなど作れませんがな!」と言うと、「卵は平気。だから肉抜きのやつ作る」ということだった。そもそも通常お好み焼きに使う豚は、インドでは不浄の動物とされているため食べる人はいないので、日本流の完璧なお好み焼きを作るのは不可能だったわけだが。

夕方、自宅近くまでリキシャでやってきた友達から、再びSMSで、「Wet Datesは家にある?もしくは近所で変える店はある?ハムザが断食を終えるのに必要なんだ!すぐに教えて!!」という連絡が入る。ほんの数行の中にわけのわからないことが多すぎて、とてもすぐになど返信できたものではない。まず、Wet datesとは何ぞ。オンライン英和辞典で調べても出てこない。Googleで画像検索をかけてみて何なのかわかった。インドのお店でよく見かける木の実のようなものだった。次に、断食を終えるのに必要だ、という一説。これは、先の記事でも書いたが、ムスリムの習慣のひとつ、先月から続いているラマザン(ラマダン)の断食に関することである。彼らはこの期間中、夜明け前に朝食をとり、それから日が暮れるまで水も含めていっさい口にしてはいけない。そして一日5回お祈りをする。友達が言っていたのは、この一日の断食を終えるのにWet datesを口にしなければならない、ということのようであった。ところが名前さえ知らなかったくらいの私の家にこれがあるわけもなく、近所でも具体的にどこに売っているか見当がつかない。やってきたハムザくんにとりあえず探しにいってみようか、といったところ、「なければ無いでいい」ということで、とりあえず購入しに行くまでは至らなかったが、ムスリムの文化について、新たな発見をさせていただいた。

さて、お好み焼き作り開始。みなさん、よく手伝ってくれて、調理は着々と進行。とりあえず、ノンベジタリアンのハムザ君には、豚肉の代わりにラムを買っておいたが、ここでまた問題発覚。ベジタリアン用のお好み焼きを作った後、肉を加えようとすると、「待った!」の声。「面倒で申し訳ないんだけど、僕らは肉を炒めたフライパンを共用できないから別の使うか、都度洗わないといけないんだ」とのこと。おや、これもどこかで聞いたことのある話。つまり、ベジタリアンを貫くために肉を炒めたフライパンで料理をするのも禁止ということである。結局、フライパンは2つないので洗って使うことで事無きを得た。

ここからは蛇足だが、インド人の嗜好は実に様々である。これまでウクライナ、アメリカ、コスタリカなどなど、いろいろな国の人にお好み焼きを味わってもらい、どこの国でもおたふくソースは評判だった。企画者のインド人の友達も、メインはこのソースの味が気に入って今回の企画に至ったのだが、その妹が一口食べて、「薬の味がする!」といって拒否反応を示したのだ。おたふくソース、インドでもいけるかと思いきや、ここ、ムンバイで敗北。その後作ったクレープはそこそこお気に召してくれたようだったが、本当にインド人の嗜好は予測が難しい。みそ汁を好むインド人と、匂いがダメ、という人もいる。ちなみに知る限りだと、ロシア人にとってのインド料理は最悪で、インド人にとってのロシア料理は最悪である。ムンバイにはロシア人のビジネスマンや、旅行者が多いので彼らと交流する機会が多いのだが、共通してロシア人はスパイスだらけのインド料理が大嫌いで、ロシアに行ったことのあるインド人はあのプレーンな味のロシア料理が大嫌いなのだ。

たった数時間の間に垣間見た、宗教の違いにおける常識の違い。日本では宗教を気にして生活することが無いため、こういった話は特に面白い経験となる。

2件のコメント

  1. ブルドッグソースではなく、おたふくソースにしたの??
    前回はブルドッグだったけれども。

    ちなみに、日本ではおたふくが主流らしいです。。。悲しいことに。

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  2. ああ、そうだ、ブルドッグでした。おたふくソースも実はあったのだが、肉のエキスが入っていたので。まあ、どっちでも対してかわらないっしょ。。

    ちなみにインドの小麦粉でも十分うまかったわ。

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